こんにちは。松戸市・柏市・流山市で相続税に強い税理士の秋元隆正です。
今回は、相続における生命保険の活用についてお話したいと思います。
生命保険は、不測の事態に備えるための手段としては勿論のこと、相続対策としても用いられます。
この相続対策の部分にスポットを当てて、説明していきます。
目次
1 相続において生命保険を活用するメリット・理由
2 相続税の非課税枠
3 納税資金の準備
4 財産を渡す相手を指定できる(渡したい人に渡せる)
5 財産分与の不公平の是正
6 遺留分対策
7 相続を放棄しても死亡保険金を受け取れる
8 最後に
1 相続において生命保険を活用するメリット・理由
相続において、生命保険を活用するメリットや理由はいくつかありますが、主なものは次の通りです。
① 相続税の非課税枠の利用
② 納税資金の準備
③ 財産を渡す相手を指定できる(渡したい人に渡せる)
④ 財産分与の不公平の是正
⑤ 遺留分対策
⑥ 相続を放棄しても、死亡保険金を受け取れる
続いて、各項目を具体的に見ていきましょう。
2 相続税の非課税枠の利用
相続人が受け取った死亡保険金のうち、一定の金額までは相続税が非課税となります。
非課税となる金額の限度は、次の算式により計算した金額です。
500万円×法定相続人の数=生命保険金等の非課税限度額
法定相続人が1人の場合は500万円、2人の場合は1,000万円、3人の場合には1,500万円となります。(以後、1人増えるごとに500万ずつ増加。)
従って、上記の非課税限度額までなら、死亡保険金で遺した方が他の財産で遺すよりも相続税の課税対象が少なくなるため、節税になります。
ただし、相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った死亡保険金は非課税とはなりませんので注意してください。
そして、受取人が相続税の2割加算の対象者であれば、逆に相続税が増えることもあります。
なお、ここでいう死亡保険金は、被相続人が保険料を負担していた保険契約の保険金、すなわち相続税の課税対象になる保険金とします。
3 納税資金の準備
相続税は、金銭一括納付が原則です。
しかし、財産のうちに不動産の占める割合が高いなど、相続税を金銭で一括納付することが無理・困難な場合が、多々あります。
また、延納や物納は要件やハードルが高く、許可を受けることは容易ではありません。
そこで、生命保険の登場です。
生命保険であれば、少ない資金(保険料)で大きな保障(死亡保険金)を得ることが可能ですので、納税資金を準備する方法としては、かなり有効です。
なお、納税資金の準備方法として生命保険を活用するのであれば、相続税がいくらくらいになるのか、事前にシミュレーションをおこない、必要な保証額を計算することが必要です。
いざ相続が発生して相続税を計算したら、生命保険金では足りなかったなんてことにもなりかねませんので。
4 財産を渡す相手を指定できる(渡したい人に渡せる)
生命保険は、死亡保険金の受取人を指定することができます。
従って、財産を渡したい人を受取人に指定すれば、財産を確実に渡す事ができます。
死亡保険金の受取人に指定できる範囲を、原則、配偶者及び2親等以内の血族や親族に限定している生命保険会社が多いですが、これ以外の人を受取人に指定することが可能な場合や、これ以外の人を受取人に指定することを認めている生命保険会社もあります。
また、死亡保険金の受取人を複数人指定することも可能です。
その場合には、「配偶者50%:長男30%:次男20%」のように、受取割合を指定することもできます。
なお、死亡保険金は相続財産ではなく、保険契約に基づいて受取人が受け取るもの、つまり、受取人固有の財産であると考えるのが原則です。
従って、遺産分割の対象にはならないため、特別受益や遺留分に関係なく、死亡保険金(財産)を受取人(渡したい人)に確実に渡すことができます。
しかし、死亡保険金が相続財産の総額と比べて著しく高額などの場合には、特別受益として取り扱われて遺産分割に組み込まれてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
5 財産分与の不公平の是正
主な財産が、「不動産のような分割しにくい財産」、「特定の財産だけ収益性が高い」などの場合には、不動産や高収益財産をもらう人の相続分が多くなり、財産分与が不公平になってしまいます。
そこで、不動産や高収益財産をもらう人以外の相続人を受取人にして生命保険に加入すれば、死亡保険金によって財産分与の不公平を是正すること可能です。
もちろん、生命保険に加入する前に、不動産や高収益財産の価値を計算しておくことは必要でしょう。
6 遺留分対策
5の逆の発想のケースです。
遺産の殆どが不動産である場合、遺産分割が不公平になるのは同じです。
ただし、不動産を特定の相続人に相続させたいが、相続人間の仲が悪いなどで遺留分の問題が発生する可能性が高いという場合があります。
この場合、5のように不動産を相続しない相続人を死亡保険金の受取人にしても、死亡保険金は原則・遺留分に影響しないため、問題は解決しません。
そこで、不動産を相続する相続人を受取人にして生命保険に加入し、死亡保険金によって現預金を得られるようにします。
こうすることにより、他の相続人から遺留分の減殺請求があっても、死亡保険金によって遺留分を支払うことができるようになります。
7 相続を放棄しても死亡保険金を受け取れる
もし、被相続人に相続財産と比べて多額の借金があった場合には、相続人である家族(配偶者や子など)は借金を引き継ぎたくないので、相続放棄をするでしょう。
その場合でも、保険金受取人を「特定の人(例:秋元隆正)」か「法定相続人」としていれば、指定された人または法定相続人は、死亡保険金を受け取ることができます。
それは、上記の「 4 財産を渡す相手を指定できる」でも説明しましたが、生命保険は受取人固有の財産であり、相続放棄があった場合でも、それは変わらないからです。
多額の借金を抱えている人が、家族に少しでも遺してあげたいという場合に有効な手段です。
ただし、注意点が2つあります。
1つ目は、相続放棄をすると受取人は相続人ではなくなるため、「相続税の非課税枠」が使えません。(ただし、基礎控除は使えます。)
従って、死亡保険金の金額によっては、相続税がかかる可能性があります。
2つ目は、債権者は生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえて、これを行使することができます。
債権者に生命保険を解約されてしまっては、当たり前ですが死亡保険金は支払われません。
従って、多額の借金を抱えている人は、掛け捨ての解約返戻金のないタイプの生命保険に加入した方がいいかも知れません。
8 最後に
このように、生命保険は、相続税がかかる・かからないに関わらず、活用することができるものです。
近年、外貨建保険のような投資性の高い保険商品が社会問題になっていますが、相続対策で活用するのであれば、必要な金額を確実に準備できる保険に加入すべきです。
その為にも、生命保険会社の外交員や銀行の担当者に言われるままに契約するのではなく、ご自身が保険契約についてキチンと理解する、そして、理解できる保険に加入しましょう。
ご自身で判断が付かない場合には、ご家族や税理士などの専門家に相談してみてください。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
松戸市・柏市・流山市で相続税に強い税理士 秋元隆正のブログ第17回
2020年1月14日