こんにちは。
相続税に強い秋元隆正税理士事務所の職員の菱田です。
宜しくお願いします。
相続税法には、障害者の相続税負担を軽くする為に、「障害者控除」という規定があります。
この障害者控除は、障害者の年齢・障害の程度に応じて、相続税の税額控除を受けることができます。
障害者控除により、相続税額が0円になる場合は相続税の申告が不要になりますので、チェックしてみて下さい。
目次
1 相続税の障害者控除
① 障害者控除とは
② 障害者控除を受けるための条件
(ア) 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること
(イ) 被相続人の法定相続人であること
(ウ) 85歳未満の者であり、かつ、相続開始時において障害者であること
③ 障害者控除額の計算方法
④ 一般障害者と特別障害者
2 障害者控除額の計算(具体例)
① 例1 一般障害者 年齢55歳
② 例2 特別障害者 年齢55歳
③ 例3 障害者控除額が障害者本人から引ききれない場合
(特別障害者 年齢55歳 )
④ 例4 障害者控除によって相続税額が0円になる場合
→ 相続税申告不要
3 最後に
1 相続税の障害者控除
① 「障害者控除」とは
相続又は遺贈により財産を取得した相続人が障害者の場合、相続税額から一定の金額を控除できるものです。
なお、障害者控除は、被相続人(亡くなった人)ではなく、相続人が障害者である場合に適用が可能ですので、注意して下さい。
未成年者控除と同じく、障害者控除額が障害者本人の相続税額よりも大きくて引ききれない場合は、残りをその障害者の扶養義務者(※1)の相続人の相続税額から引くことができます。
※1 扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
② 障害者控除を受けるための条件
(ア)相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること
(住所がない場合、一定の条件を満たせば受けれますが、ここでは省略します。)
(イ)被相続人の法定相続人であること
(ウ)85歳未満の者であり、かつ、相続開始時において障害者であること
③ 障害者控除額の計算方法
・一般障害者の場合
障害者控除額 = (85歳 - 相続したときの年齢) × 10万円
・特別障害者の場合
障害者控除額 = (85歳 - 相続したときの年齢) × 20万円
※ 相続したときの年齢の1年未満の部分は切り捨て
例:55歳10か月のときに相続した場合、10か月を切り捨て55歳で計算します。
④ 一般障害者と特別障害者
一般障害者の主な対象者は以下の方です。
・身体障害者手帳に身体上の障害の程度が3級から6級と記載されている者
・精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級または3級と記載されている者
特別障害者の主な対象者は以下の方です。
・精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級と記載されている者
・身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級又は2級と記載されている者
※上記以外でも、一般障害者、特別障害者の対象となる方がいますので、詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
2 障害者控除額の計算(具体例)
では、実際に障害者控除額の計算してみましょう。
① 例1 一般障害者 年齢55歳
令和4年10月20日に相続が発生し、相続人であるA(一般障害者)は55歳10か月で相続税額800万円の場合。
(ア) 障害者控除額 (85歳 - 55歳) × 10万円 = 300万円
(イ) Aの納税額 800万円 - 300万円 = 500万円
② 例2 特別障害者 年齢55歳
令和4年10月20日に相続が発生し、相続人であるA(特別障害者)は55歳10か月で相続税額800万円の場合。
(ア) 障害者控除額 (85歳 - 55歳) × 20万円 = 600万円
(イ) Aの納税額 800万円 - 600万円 = 200万円
③ 例3 障害者控除額が障害者本人から引ききれない場合
(特別障害者 年齢55歳 )
令和4年10月20日に相続が発生し、相続人であるA(特別障害者)は55歳10か月で相続税額400万円、Aの兄B(扶養義務者)の相続税額が500万円である場合。
(ア) 障害者控除額 (85歳 - 55歳) × 20万円 = 600万円
(イ) Aの納税額(申告不要) 400万円 - 400万円 = 0円
(ウ) 引ききれない障害者控除額 600万円 - 400万円 = 200万円
(エ) 兄Bの納税額 500万円 - 200万円 = 300万円
④ 例4 障害者控除によって相続税額が0円になる場合
→ 相続税申告不要
令和4年10月20日に相続が発生し、相続人であるA(特別障害者)は55歳10か月で相続税額200万円、Aの兄B(扶養義務者)の相続税額が300万円である場合。
(ア) 障害者控除額 (85歳 - 55歳) × 20万円 = 600万円
(イ) Aの納税額 200万円 - 200万円 = 0円
(ウ) 引ききれない障害者控除額 600万円 - 200万円 = 400万円
(エ) 兄Bの納税額 300万円 - 300万円 = 0円
→上記の計算結果の通り、A・兄Bの納税額は0円となりますので、相続税申告そのものが不要になります。
また、障害者本人の取得財産が0円では、障害者控除は適用できないため、何かしらの財産を取得する必要がありますので、注意して下さい。
3 最後に
以上が、相続税の「障害者控除」の税額控除の説明になります。
障害者控除によって、相続税額が0円になることで申告不要になりますが、正確な相続税額等の計算が必要になります。
障害者控除は1回受けたことがあると、2回目以降の控除額が減額されますので、計算に注意が必要です。
ご自身で計算の判断が難しい場合には、税理士などの専門家に早めに相談してみてください。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
記事作成者:菱田
監修者:税理士 秋元隆正
松戸市・柏市・流山市で相続税に強い税理士 秋元隆正のブログ第20回
2022年11月8日