こんにちは。松戸市・柏市・流山市で相続に強い税理士の秋元隆正です。
ブログの第2回目は、タンス預金について書いていきます。
目次
1 タンス預金とは?
2 タンス預金のメリット
3 タンス預金のデメリット
4 国税局・税務署の調べ方
5 タンス預金は相続税対策となるのか?
6 タンス預金なんか、もうやめませんか?
1 タンス預金とは?
タンス預金とは、その名のとおり、現金をタンスなどにしまっておく(隠しておく)ことです。
場所は、タンスの他に仏壇・金庫・銀行の貸金庫・机の引き出し・本棚・本棚の本の中・下駄箱・食器棚・冷蔵庫・ベッドの周り・押し入れ・屋根裏・床下・壁に掛かっている絵や掛け軸の裏・神棚・米櫃・炊飯器・ポット・ガスコンロのグリル・ゴミ箱・トイレのタンク・植木鉢・庭・花壇・車のトランク・自宅駐車場に置いてあるタイヤや段ボール・ゴルフバック・子供のランドセル・子供部屋のおもちゃ箱・会社のロッカー など。
自宅の部屋の壁の前に壁を作り、その隙間に隠していたという記事を、新聞かインターネットで見たことがあります。
恐らく、お墓の中や裏山などの山中に隠している人もいるのでしょうね。
自分で持っているとバレるから、親戚や知人・愛人に預けておくなんてこともあるようです。
映画やドラマに出てきそうな場所もありますし、罰当たりな場所、完全に後ろめたいお金なんだろうなって思ってしまう場所もありますが、皆さん、よく考えますね。
もし、上記以外の隠し場所があったら教えてください。
理由は、単純に手元に現金があった方が安心する・銀行が潰れたら大変・預金しておくと税務署にわかってしまう・、相続税を払いたくない(これは、脱税です。犯罪です。)、現金だとコッソリと子供たちに贈与することができる(これも場合によっては脱税です。) など。
悪意がないものから悪意があるものまで様々です。
では、タンス預金をすることのメリットやデメリットは何でしょうか?
2 タンス預金のメリット(と言われている理由)
・何かあった時にすぐに現金を出せる。
・銀行(金融機関)が破綻した時のペイオフ対策。
・国に把握されない財産が出来る。
「何かあった時にすぐに現金を出せる。」
これは確かにメリットかも知れません。
普段はクレジットカードや電子マネーで買い物ができますが、災害時の大規模停電では決済する機器が使えなくなり、現金でないと買い物ができなくなります。
しかし、何百万円・何千万円の現金が手元にある必要はなく、家族の当面の生活ができるくらいの現金があれば事足りるでしょう。
従って、メリットになるのは、せいぜい数十万円であり、それを超える部分はメリットではないと思います。
「銀行(金融機関)が破綻した時のペイオフ対策。」
ペイオフ対策という理由ですが、本当にメリットでしょうか?
銀行が破綻した際には、1銀行1,000万円までしか元本保証されないというのがペイオフですが、仮に3,000万円を持っている人であれば、3つか4つの銀行に分けて預金しておけば済む話だと思います。
また、今の日本で銀行などの金融機関が破綻する可能性って、どのくらいでしょうか?
全く無いとは言いませんが、私は殆ど無いと思っています。
破綻しそうになっても、国費投入など、国の支援が入るでしょうし。
それに、金融機関がポンポン破綻する状態になってしまったら、現金の価値も無くなっているでしょう。
従って、ペイオフ対策という理由もメリットにはならないと思います。
「国に把握されない財産ができる。」
国とは言え誰かに自分の財産を把握されるのは気持ちが悪いものですから、そう思う気持ちはよくわかります。
ましてや、マイナンバーが導入され、いずれは預貯金や不動産などとも紐づけされることが懸念されているので、その気持ちに拍車がかかるのも無理もないでしょう。
しかし、重要なのはこの先です。
国に把握されていない財産は、考え方によっては、その人が持っているはずのない物ということになります。
金額にもよりますが、これを使おうとする時に問題が発生します。
食事をする・旅行をするくらいなら問題はでませんが、車や不動産を買おうとする場合・相続人の口座に入金しようとする場合はどうでしょう?
突然どこからか数百万円・数千万円が出てくるのです。
これって、どう思います?おかしいですよね?
そうすると、このお金は使えないお金になるのです。せっかく目の前にお金があるのに使えない。
相続税がかけられた場合でも、持っている財産以上の金額は取られませんが、このお金は丸々使えません。
このお金の価値はゼロです。
これでは、相続税を払った方が安かったということになります。
思い切って使った場合でも、税務署にバレないかが寝ても覚めても頭に浮かんでくるのです。
もう、生きた心地はしません。夜も眠れません。
相続で除外した現金が前提の文章にはなりましたが、国に把握されない財産ができるというのは必ずしもメリットにはならず、場合によってはデメリットになるのです。
3 タンス預金のデメリット
・盗難や火災・災害に遭う。
・預貯金と違い、一切保証されない。
・保管(隠し)場所を忘れてしまい見付からない。
・隠していたことを忘れていて、保管場所(物)を間違って捨ててしまう。
・家族が保管場所(物)ごと捨ててしまう。
・遺族が、現金があることを知らずに保管場所(物)ごと捨ててしまう。
・何だかんだ使ってしまい、減ってしまう。
・今更、表に出せないお金になっている。
「盗難や火災・災害に遭う。」
「預貯金と違い、一切保証されない。」
自宅に泥棒が入った場合と、銀行に泥棒に入った場合で考えてみましょう。
自宅に泥棒が入り現金が盗られた場合には、誰も保証してくれません。
しかし、銀行に泥棒が入って現金が盗られても、預金している人の預金残高には何の影響もありません。
これは、火災・災害でも同じです。
金融機関に預貯金しているということは、これらのリスクから守られている・保証されているということなのです。
「保管(隠し)場所を忘れてしまい見付からない。」
「隠していたことを忘れていて、保管場所(物)を間違って捨ててしまう。」
「家族が保管場所(物)ごと捨ててしまう。」
保管場所を忘れてしまい見付からないということは、現金に限らず、結構有りがちではないでしょうか。
見付からないだけならまだしも、本人が間違って保管場所(物)を捨ててしまった、隠していること自体を知らない家族が保管場所(物)を捨ててしまったら、気が付いた時には後の祭りです。
数百万円・数千万円の現金が、一気にゼロになります。
できることと言えば、こんなことなら銀行に預けておけば良かったと後悔することぐらいでしょうか。
「遺族が、現金があることを知らずに保管場所(物)ごと捨ててしまう。」
これも結構多いと思います。
タンスの引き出しの中に入っている程度ならすぐに見付けることができるでしょうが、見付からないように隠すのでしょうから、誰も気付かないということは考えられます。
そして、気付かないまま、タンスなどを現金とともに捨ててしまう。
これでは、故人は何のために一生懸命働いてお金を貯めたのか・・・。なんか虚しいですね。
この場合、遺族は現金を捨ててしまった事にも気付きませんし、隠した本人は亡くなっているので、誰も後悔しないのが、せめてもの救いでしょうか。
「何だかんだ使ってしまい、減ってしまう。」
特に大きな買い物をしたわけではないのに、財布の中のお金が思ったより減っていたってこと、よくありませんか?
人間、現金が手元にあると、何となく使ってしまいます。
現金を管理する帳簿などをつけていれば、こうしたことは防げるのですが、こういう人は帳簿なんてつけません。
結果、何に使ったか分からないけどお金が減った、言わば無駄遣いです。
頑張って稼いだお金なのですから、無駄遣いするのではなく、価値のあるお金の使い方をしたいものです。
「今更、表に出せないお金になっている。」
メリットの「国に把握されない財産ができる。」で書いたことと同じ内容なので省きますが、これもかなり勿体ない状態です。
お金があるのに使えないなんて・・・。
持っていても嫌なので、山の中や竹林に捨ててしまうのでしょうか?
ごくたまに、現金が捨てられているのが見付かったというニュースが報道されますが、こういうお金だと私は思っています。
4 国税局・税務署の調べ方
では、国税局や税務署は、どのようにしてタンス預金を把握するのでしょうか?
金融機関からは、過去10年分くらいの口座のデータを取ることができます。(これは、本人や被相続人のものであれば、皆さんも取ることができます。)
取り寄せた口座の動きのうち、大きな金額の入出金を確認していきます。
他の口座に資金移動していたり、不動産などを買ったという裏付けが取れればいいですが、他の物などに変わっていると裏付けが取れない出金は、現金で残っているのでは?と推測します。
それが多額になると、「税務調査をして確認してみるか。」となるのです。
なお、相続税の申告の際には、当事務所でも7~10年分の口座データをご用意していただき、国税局や税務署と同等の期間分の入出金を確認するように努めております。
5 タンス預金は相続税対策となるのか?
タンス預金を相続税対策に利用するということは、単純に相続財産から除外して相続税の申告をするということでしょう。
これは脱税です。犯罪です。やってはいけない行為です。
また、国税局・税務署の調査能力はとても高いです。
本人に通知することなく、預貯金のデータを取ることができますし、他にも様々な資料やデータを持っていたり、取ることができます。
ほぼ確実に、タンス預金が相続税の申告から除外されていることを調べ上げることでしょう。
見付かった場合には、相続税本税と延滞税の他に重加算税という多大なるペナルティが課せられます。
脱税額が大きければ、起訴されて有罪判決を受けることもあります。
従って、私の答えは、タンス預金は相続税対策にはならないです。
6 タンス預金なんか、もうやめませんか?
以上のように、メリットはほぼ無い、デメリットは盛り沢山、相続税対策にもならないというのが私の意見です。
自宅に保管しておいて盗られたり、失くしたり、無駄遣いして後悔するよりも、金融機関に預けておくのが一番安全かつ費用がかからない保管方法です。
これを読んでいただいた方で、多額のタンス預金をしている方には、手元に必要な金額以外の現金は、今すぐにでも金融機関に預けることをお勧めします。
既に表に出せないお金になっている場合は、もう遅いのでしょうが・・・。
最後にもう一度。タンス預金はデメリットしかないので、もうやめませんか?
今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
松戸市・柏市・流山市で相続に強い税理士 秋元隆正の相続ブログ第2回
2019年2月18日
※2019年8月12日に、この続きのブログ記事を書きました。こちらも併せてお読みください。
https://akimoto-souzoku.com/blog/タンス預金について思うこと%E3%80%80相続ブログ第14回/