こんにちは。
相続税に強い秋元隆正税理士事務所の職員の菱田です。
今回、初めてブログを担当します。
宜しくお願いします。
民法改正により、令和4年(2022年)4月1日以降、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
相続税法には、未成年者の相続税負担を軽くするために、「未成年者控除」と言う規定があります。
今回は、この民法改正による成年年齢の引き下げが、相続税の「未成年者控除」に与える影響についてお話ししたいと思います。
目次
1 相続税の未成年者控除
2 未成年者控除額の計算(具体例)
3 最後に
1 相続税の未成年者控除
① 「未成年者控除」とは
相続又は遺贈により財産を取得した相続人が未成年者の場合、相続税額から一定の金額を控除できるものです。
また、控除額が未成年者本人の相続税額よりも大きくて引ききれない場合は、残りをその未成年者の扶養義務者(※1)の相続税額から引くことができます。
※1 扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
② 未成年者控除額の計算方法
(ア) 民法改正前(令和4年3月31日以前)
未成年者控除額 = 10万円 × (20歳 - 相続したときの年齢)
(イ) 民法改正後(令和4年4月1日以降)
未成年者控除額 = 10万円 × (18歳 - 相続したときの年齢)
※ 相続したときの年齢の1年未満の部分は切り捨て
例:5歳8か月のときに相続した場合、8か月を切り捨てて5歳で計算します。
③ 未成年者控除を受けるための条件
(ア) 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること(住所がない場合、一定の条件を満たせば受けれますが、ここでは省略します。)
(イ) 相続や遺贈で財産を取得したときに18歳(民法改正前は20歳)未満であること
(ウ) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること
(エ) 相続または遺贈により財産を取得すること
2 未成年者控除額の計算(具体例)
では、実際に未成年者控除額を計算してみましょう。
例1 民法改正前 成年年齢 20歳
令和4年2月11日に相続が発生し、相続人であるAは5歳8か月で相続税額200万円の場合。
(ア) 未成年者控除額 10万円 × (20歳 - 5歳) = 150万円
(イ) Aの納税額 200万円 - 150万円 = 50万円
例2 民法改正後 成年年齢 18歳
令和4年5月11日に相続が発生し、相続人であるAは5歳11か月で相続税額200万円の場合。
(ア) 未成年者控除額 10万円 × (18歳 - 5歳) = 130万円
(イ) Aの納税額 200万円 - 130万円 = 70万円
つまり、成年年齢の引き下げにより、未成年者控除額は最大で20万円(10万円×2年)の控除額が使えなくなり、未成年者の相続税額の負担が大きくなることになります。
例3 未成年者控除額が引ききれない場合(民法改正後)
令和4年5月11日に相続が発生し、相続人であるAは5歳11か月で相続税額100万円、Aの兄B(扶養義務者、成年)の相続税額が120万円である場合。
(ア) 未成年者控除額 10万円 × (18歳 - 5歳) = 130万円
(イ) Aの納税額 100万円 - 100万円(< 130万円) = 0円
(ウ) 引ききれない金額 130万円 - 100万円 = 30万円
(エ) 兄Bの納税額 120万円 - 30万円 = 90万円
3 最後に
以上が、民法改正による成年年齢の引き下げによる、相続税の「未成年者控除」の変更点です。
簡単に言うと、「今までは成年年齢が20歳だったので20という数字を使っていましたが、民法改正後は18という数字を使います。」と言うことです。
令和4年中に発生した相続は、その発生日により、「20」若しくは「18」を使い分ける必要がありますので、注意して下さい。
また、未成年者控除は1回受けたことがあると、2回目以降の控除額が減額されますので、計算に注意が必要です。
ご自身で計算や判断が難しい場合には、税理士などの専門家に早めに相談してみてください。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
記事作成者:菱田
監修者:税理士 秋元隆正
松戸市・柏市・流山市で相続税に強い税理士 秋元隆正のブログ第19回
2022年9月28日